折りたたみiPhoneは、なぜ開いても閉じても同じ形なのか ― 1:√2という唯一の比
アップルが9月9日に発表した折りたたみ式のiPhone Duoは、開いた画面と閉じた画面の形がほぼそろっています。半分に折っても形が変わらない長方形は、数学的には1:√2しかありません。公表された数値で確かめました。
この記事の要点
- アップルが発表した折りたたみ式のiPhone Duoは、開いた画面と閉じた画面の縦横比がほぼそろっています。公式の画素数で計算すると1:1.42と1:1.45でした。
- 半分に折っても形が変わらない長方形は、数学的には1:√2(約1:1.414)しかありません。A判の紙と同じ性質です。
- 他社の折りたたみ機は、閉じると細長く、開くとほぼ正方形になります。2つの状態で形をそろえる設計は、いまのところ例外的です。
比率の正体 ― 2つの画面は「1:1.42」と「1:1.45」
アップルは2026年9月9日、同社初の折りたたみ式スマートフォン「iPhone Duo」を発表しました。閉じたときは5.4インチ、開くと7.6インチになります。発表文には「両方のディスプレイは同じアスペクト比(縦横比)を共有するため、コンテンツは比例して拡大縮小する」と書かれています。
ここが、これまでの折りたたみ機と違うところです。ふつうは開くと形が変わってしまいます。アップルの技術仕様ページに載っている画素数は、内側が1878×2670、外側が1398×2034です。縦横比を計算してみます。
外側 2034 ÷ 1398 = 1.4549いずれも短辺を1としたときの長辺。差は約2.3%で、たしかにほぼ同じ形です
なぜ√2なのか ― 半分に折って形が変わらない唯一の比
長方形の短辺を1、長辺をrとします。長辺を半分に折ると、辺の長さは1とr/2になります。折った後の「長辺÷短辺」は、rが2より小さければ 1 ÷(r/2)、つまり 2/r です。
折る前と後で形が同じになる条件は、この2つが等しいことです。
たとえば16:9(1.7778)の画面を半分に折ると1.125になり、細長い形がほぼ正方形に変わります。1:√2だけが、折っても開いても同じ形に戻ってきます。A判の紙(A4→A5)が同じ形なのも、この性質によるものです。形を保ったまま面積だけを半分にできる比は、√2しかありません。
数字で確かめる ― 対角線は√2倍、面積はほぼ2倍
公式の仕様には、角の丸みについての注記があります。角を丸める前の標準的な長方形として測ると7.58インチと5.36インチで、実際に表示に使える範囲はこれより小さい、というものです。この2つの対角線の比を計算します。
さらに、画素数と画素密度(内側430ppi、外側460ppi)から画面の実寸を出すと、次のようになります。
| 画素数 | 縦横比 | 実寸 | 面積 | |
|---|---|---|---|---|
| 内側(開) | 1878×2670 | 1.4217 | 約110.9×157.7mm | 約175.0cm² |
| 外側(閉) | 1398×2034 | 1.4549 | 約77.2×112.3mm | 約86.7cm² |
面積の比は2.02倍。対角線は√2倍、面積はほぼ2倍という、A判の紙とそっくりの関係になっています。本体の外形も、公式仕様では開いた状態が164.6×117.8mm(1.397)、閉じた状態が117.8×84.1mm(1.401)です。どちらも√2に近い値です。なお、画素数と画素密度から対角線を逆算すると7.59インチとなり、注記の7.58インチとは0.15%ほどの差が出ます。公表値がどちらも丸めた数字のためです。
他社はどうか ― 「細長い」から「ほぼ正方形」へ
比較のために、サムスンがGalaxy Z Fold7で公表している数値を見ます。メイン画面は2184×1968(縦横比1.110)、カバー画面は2520×1080(21:9、2.333)です。形の違いは2.1倍にもなります。
つまり一般的な折りたたみ機は、閉じると細長い棒のような画面、開くとほぼ正方形の画面になります。同じアプリを開くと、見える範囲がごっそり変わります。iPhone Duoの2.3%という差は、これと比べると桁違いに小さいと言えます。
俗説・誤解チェック ― 「まったく同じ形」ではない
公式の画素数から計算するかぎり、これは正確ではありません。1.4217と1.4549には約2.3%の差があります。またどちらもぴったり√2ではなく、内側は+0.53%、外側は+2.88%ずれています。外側の画面のほうが、わずかに細長い形です。
理由は公表されていませんが、外側は本体の縁(ベゼル)やヒンジの厚みの分だけ横幅が削られるため、と考えるのが自然です。数学的な理想値をそのまま作れるわけではありません。「同じ比率」は設計の方針を示す言葉であって、小数点以下まで一致する保証ではない、と受け取るのが正確でしょう。
黄金比研究所の見立て
これは黄金比(1:1.618…)ではありません。折りたたみという動作が要求する比は、黄金比ではなく√2です。黄金比は「全体と部分」の関係から出てくる比ですが、√2は「半分にしても形が変わらない」という条件から一意に決まります。折る機械にとって必然性があるのは後者のほうです。
紙の世界では1922年のドイツ規格DIN 476で採用された答えが、可動する画面という新しい場所で選び直された、と見ることができます。ただし実機の数値は理想からわずかにずれています。理屈が先にあって、そこに製造の都合が重なる。その差を消さずに見ておくことが、比率を語るときには大切だと考えます。
出典・参考資料
- Apple unveils iPhone DuoApple Newsroom
- iPhone Duo - 技術仕様Apple
- iPhone Duo is official — price, release date, specs, and everything you need to knowTom's Guide
- iPhone Duo Display Resolutions ExplainedThe Mac Observer
- Samsung Galaxy Z Fold7: Raising the Bar for SmartphonesSamsung Global Newsroom