秋分の日は、なぜ昼と夜が同じ長さにならないのか ― 太陽の上のふちと大気がつくる16分
2026年の秋分の日は9月23日。「昼と夜がちょうど同じ長さになる日」と習いますが、東京の昼は12時間8分、夜は11時間52分。約16分のずれは、太陽の大きさと大気が生みます。計算で確かめます。
この記事の要点
- 2026年の秋分の日は9月23日。けれども東京の昼は12時間8分、夜は11時間52分で、約16分の開きがあります。
- 理由は2つ。日の出・日の入りが「太陽の上のふち」で定義されること(昼が約2.6分のびる)と、大気が光を曲げる大気差(約5.8分)です。
- 昼と夜が本当に等しくなる日は数日あと。東京では9月27日ごろで、緯度が低い土地ほど遅くなります。
秋分の日の昼と夜は、16分ずれている
気持ちのよい説明です。太陽が真東から昇って真西に沈み、一日がきれいに半分ずつに分かれる。季節の折り返し点にふさわしい話に聞こえます。
ところが、実際の時刻表を見ると様子が違います。2026年9月23日、東京の日の出は5時29分、日の入りは17時37分。昼の長さは12時間8分、夜は11時間52分。差は約16分あります。
比にすると1対0.978。1対1には、わずかに届きません。しかも、たまたま今年ずれたわけではありません。この定義で計算するかぎり、秋分の日の昼は、毎年、地球上のほぼどの土地でも夜より長くなります。
犯人は「太陽の上のふち」と「大気差」
まず、秋分そのものは何かを確かめます。国立天文台の説明では、秋分とは太陽が「秋分点」を通過する瞬間です。秋分点は、太陽の通り道(黄道)と天の赤道が交わる点のひとつ。この瞬間を含む日が「秋分日」で、祝日の秋分の日になります。
この日、太陽はほぼ真東から昇り、真西に沈みます。もし太陽が大きさのない点で、地球に大気がなかったら、昼と夜はほぼきっちり半分ずつに分かれるはずです。実際に計算しても、東京で「太陽の中心が地平線を横切ってから、ふたたび横切るまで」は11時間59.6分。ほぼ12時間です。
ずれを生むのは、その先にある2つの事情です。
1つめは、日の出・日の入りの決め方です。国立天文台は、日の出を「太陽の上のふちが地平線と重なる瞬間」と定めています。日の入りも同じで、上のふちが地平線に沈む瞬間です。中心が届いた瞬間ではなく、先頭が着いた瞬間を「出た」と数えるわけです。太陽の見かけの半径はおよそ16分角(1分角は1度の60分の1)。この半径のぶん、日の出は早まり、日の入りは遅れます。東京では合わせて約2.6分です。
2つめは大気差です。地球の大気はレンズのように光を曲げるため、地平線近くの天体は本当の位置より浮き上がって見えます。国立天文台は、地平線での大気差を35分8秒角として日の出入りを計算しています。太陽がまだ地平線の下にいるうちから、その像はすでに地平線の上に顔を出しているのです。東京では、これで約5.8分。
2つを足すと、昼は約8.4分のびます。出発点の11時間59.6分に足して、12時間8.0分。12時間を超えた分は8.0分で、そのぶんはそのまま夜から差し引かれますから、昼と夜の差はその倍の約16分。冒頭の数字と合いました。
那覇と札幌では、ずれ方が違う
同じ日でも、ずれの大きさは土地によって変わります。太陽が地平線を横切る角度が、緯度で変わるからです。赤道に近いほど太陽はほぼ垂直に沈み、51分角ぶんの深さを短時間で通り抜けます。高緯度になるほど斜めに沈むため、同じ角度を通るのに時間がかかります。
| 地点 | 日の出 | 日の入り | 昼の長さ | 昼-夜 |
|---|---|---|---|---|
| 那覇(北緯26度13分) | 6:18 | 18:25 | 12時間7.2分 | 約14分 |
| 東京(北緯35度39分) | 5:29 | 17:37 | 12時間7.9分 | 約16分 |
| 札幌(北緯43度4分) | 5:22 | 17:31 | 12時間8.8分 | 約18分 |
北へ行くほど昼が長引く。夏至や冬至の極端さでよく知られる性質が、秋分の日にも小さく顔を出しています。
では、本当に等しくなるのはいつか
昼と夜がほぼ同じ長さになる日は、秋分の日そのものではなく、その数日あとに来ます。英語では、この日を equinox(秋分・春分)と区別して equilux(イクイラクス)と呼ぶことがあります。equinox が世界共通のひとつの瞬間であるのに対し、equilux の日付は地点ごとに違います。
計算すると、東京では2026年9月27日ごろ。この日の昼は11時間59.0分で、前日26日は12時間1.3分ですから、境目はこの2日の間にあります。札幌では9月26日ごろ、那覇では9月28日ごろ。緯度が低い土地ほど、秋分の日から遅れます。
赤道の近くには、そもそも等しくなる日がありません。シンガポール(北緯1度21分)の昼は、一年を通じて12時間を超え続けます。太陽の半径と大気差による上乗せは毎日はたらくのに、赤道付近では季節による昼の長さの変化そのものが小さいからです。シンガポールで太陽を点とみなして計算すると、昼の長さは一年じゅう11時間55分から12時間5分のあいだにおさまり、変動の幅は最大でも5分ほど。上乗せ分の約7分を打ち消せません。「昼と夜が等しい日」は、どこにでもある日ではないのです。
「秋分の日」は、計算で決まる祝日
ずれの話を続けましたが、秋分の日そのものは天文学の計算にきちんと従って決まります。日付があらかじめ固定されていない、珍しい祝日です。
国立天文台は毎年2月1日、翌年の「暦要項」を官報に掲載します。ここに載ることで、翌年の春分の日・秋分の日が正式に決まる仕組みです。2026年分は、2025年2月3日に発表されました。国立天文台は、2月1日が行政機関の休日にあたる場合は掲載が翌日以降にずれることがあると説明しています。2025年の2月1日は土曜日でした。
こうして決まった2026年の秋分の日は、9月23日の水曜日。前日の9月22日は、敬老の日(9月21日)と秋分の日にはさまれた平日にあたるため、祝日法の規定によって「国民の休日」になります。秋分の位置が1日動けば、この休日は消えます。天体の位置が、そのまま休みの数に効いてくるわけです。
黄金比研究所の見立て
この話のおもしろさは、「1対1にならない」ことそのものではありません。比率が、測り方の定義でふわりと動いてしまうところにあります。
太陽を点とみなし、大気を無視すれば、答えはほぼ1対1です。理屈としては正しい。けれども実際の暦は、その定義を採りませんでした。人が空を見上げて「出た」と感じる瞬間、つまり上のふちが地平線に顔を出す瞬間を、日の出と決めたのです。大気差を織り込んでいるのも同じ理由で、計算上の位置ではなく、見える位置に合わせてあります。
結果として、暦の上の昼夜比は1対0.978になりました。これは誤差ではありません。「どこを端と決めるか」を人の感覚に寄せた、選択の結果です。
比率を語るときは、まず測り方を確かめる。この連載でくり返し出てくる作法が、身近な祝日にも当てはまります。9月23日、日の出から日の入りまでを数えてみてください。たしかに8分ほど、得をしているはずです。
出典・参考資料
- 春分の日・秋分の日には、昼と夜の長さは同じになるの?国立天文台(NAOJ)
- 何年後かの春分の日・秋分の日はわかるの?国立天文台(NAOJ)
- 令和8(2026)年暦要項の発表国立天文台(NAOJ)
- 暦Wiki/日の出入りと南中/昼と夜の等しい日国立天文台 暦計算室
- 暦Wiki/国民の祝日と休日国立天文台 暦計算室
- Are day and night equal at equinoxes?EarthSky