黄金比研究所Golden Ratio Lab
2:7:3 立ち上がり・巡航・着地の時間比
もうひとつの最適比

1時間の通勤ドライブは、なぜ2:7:3で組むのか ― 道の負荷でテンポを決めたプレイリスト

運転中の音楽は、混んだ道ほど控えめに。速いテンポと単調な道を調べた研究から、60分を立ち上がり・巡航・着地に2:7:3で分けました。13曲・58分13秒、テンポの山は単調な巡航区間の真ん中に置いています。

2026年10月6日文・黄金比研究所編集部

1時間の通勤ドライブ:時間 × BPM の設計図立ち上がり:巡航:着地=2:7:3。道の負荷が高い両端はテンポを抑え、単調な巡航区間に山を置く立ち上がり巡航(幹線道路・高速)着地(市街地)研究で「速い」とされる帯(120〜140 BPM)80901001101201300102030405060経過時間(分)BPM(目安)12345678910111213計 58:131. Automatic 952. SUN 1083. Just the Way You Are 1094. Uptown Funk 1155. きらり 1176. Dreams 1207. Golden 1238. Get Lucky 1169. マリーゴールド 10610. BIRDS OF A FEATHER 10511. Africa 9212. Pretender 9213. Lemon 87図:黄金比研究所
横軸は経過時間、縦軸はBPM(目安)。帯はフェーズ、太線は各曲(番号は表と同じ)。上の赤い帯は研究で「速い」とされる120 BPM以上の範囲です。

この記事の要点

  • 60分の通勤を「立ち上がり10分・巡航35分・着地15分」に分けます。比にすると2 : 7 : 3です。
  • 道が混む両端はテンポを抑え、単調な幹線道路や高速の区間に山を置きます。模擬運転の研究で、速いテンポは混んだ市街地では注意が必要とされたためです。
  • 知らない曲は運転の負担になりうるという分析もあり、選曲は定番中心にしました。13曲・58分13秒です。

このシーンの比率

想定するのは、郊外の自宅から都心の職場まで車で通う1時間です。道は3つに分かれます。住宅街の細い道、信号の少ない幹線道路や高速、そして都心の一般道です。

立ち上がり 10分 : 巡航 35分 : 着地 15分 = 2 : 7 : 3両端は道の負荷が高い区間、真ん中は単調で負荷が低い区間

曲の長さで区切ったため、実際の配分は立ち上がり9分14秒、巡航34分21秒、着地14分38秒です。割合にすると16 : 59 : 25で、2:7:3(17 : 58 : 25)とほぼ同じです。合計は58分13秒で、60分との差は約3%に収まります(秒単位で足した実測値。表の長さは四捨五入のため、足すと1秒ずれます)。

もう1つの決まりはテンポの上限です。両端は110 BPM以下、巡航区間でも山の1曲を除いて120 BPM以下にしました。

なぜこの配分か

出発点は、イスラエルの研究者ブロドスキー氏が2001年に発表した模擬運転の実験です。BGMのテンポが速いほど、運転の速度が上がり、本人が感じる速度の見積もりにも影響しました。信号無視、車線のはみ出し、衝突は、速いテンポの曲で最も多かったと報告されています。

2022年には英国のカラギオルギス氏らが、道の負荷とテンポの組み合わせを調べました。参加者は46人。高性能のシミュレーターで、負荷の高い市街地と低い高速道路を各8分走りました。曲は速いテンポ(130〜140 BPM)、遅いテンポ(60〜70 BPM)、音楽なしの3条件です。速い曲では、信号の場面でのリスクの評価が最も高くなりました。心拍のゆらぎの指標も、速い曲で低くなりました。著者らは、負荷の高い市街地では速いテンポの曲に注意すべきだとまとめています。

一方、単調な道では音楽が役に立つ可能性もあります。オランダのウナル氏らは2013年、47人に単調な追従走行をしてもらいました。音楽があると覚醒の度合いが上がり、追従の正確さは変わりませんでした。前の車の速度変化への反応や、ハンドルでの左右の制御は、むしろ良くなった面があったといいます。

2019年のメタ分析(12研究・752人)は、音楽を聴くと衝突と前後方向の速度管理に悪影響が出ると報告しています。テンポによる差は、統計的にははっきりしませんでした。ただし、なじみのない曲では衝突が多く、運転者が自分で選んだ曲では、はっきりした悪影響は見られませんでした。ここで紹介した実験はいずれもシミュレーターによるもので(メタ分析でも12研究中10研究が模擬運転)、実際の道路とは条件が違います。

まとめると、テンポの効果は研究によって結果が割れています。それでも、混んだ道で速い曲を避け、単調な道で音楽に覚醒を支えてもらう方向は、複数の研究と矛盾しません。2:7:3という配分は、この「道の負荷」を通勤の典型的な道順に当てはめたものです。

プレイリスト(曲順)

#曲名アーティスト長さBPM(目安)フェーズ・役割
1Automatic宇多田ヒカル5:1295立ち上がり:出発直後。中速で耳を慣らす
2SUN星野源4:01108立ち上がり:住宅街を抜ける。明るさを足す
3Just the Way You Areブルーノ・マーズ3:41109巡航:幹線道路へ。巡航の助走
4Uptown Funk (feat. Bruno Mars)マーク・ロンソン4:30115巡航:上り坂
5きらり藤井 風3:52117巡航:上り坂
6Dreamsフリートウッド・マック4:18120巡航:山の手前
7GoldenHUNTR/X, EJAE, オードリー・ヌナ, REI AMI & KPop Demon Hunters Cast3:15123巡航:山の頂上(新しめの1曲)
8Get Luckyダフト・パンク, Pharrell Williams & ナイル・ロジャース6:10116巡航:長い一定区間を支える
9マリーゴールドあいみょん5:07106巡航:下り坂
10BIRDS OF A FEATHERビリー・アイリッシュ3:30105巡航:市街地の手前で落とす
11AfricaToto4:5592着地:市街地。テンポを下げる
12PretenderOfficial髭男dism5:2792着地:到着前
13Lemon米津玄師4:1687着地:到着から駐車まで

BPMは公開データベース(songbpm.com、getsongbpm.com)の値で、目安です。邦楽6曲と洋楽7曲。1977年から2025年まで、ほとんどが定番曲です。新しめの「Golden」(2025年)は、初めて聴く人がいても負担が少ない巡航区間に置きました。

立ち上がり:住宅街から幹線道路へ(0:00〜9:14)

巡航:幹線道路・高速の一定区間(9:14〜43:35)

着地:都心の一般道から駐車まで(43:35〜58:13)

曲順の設計図

立ち上がりの2曲は95 BPMと108 BPMです。住宅街では歩行者や自転車に気を配る必要があります。耳を慣らす程度の中くらいのテンポにとどめます。

巡航区間は109 BPMから少しずつ上げ、7曲目「Golden」の123 BPMを山にしました。山の位置は巡航区間のほぼ真ん中、出発から25分34秒〜28分48秒です。この1曲だけが、研究で「速い」とされる帯(120〜140 BPM)の境目を少し超えます。6曲目「Dreams」の120 BPMは、その境目ちょうどです。そのあと6分10秒の「Get Lucky」で長い一定区間を支え、105 BPMまでゆっくり下げます。

着地の3曲は92、92、87 BPMです。市街地に入ると信号、歩行者、車線変更が一気に増えます。ここで速い曲を避けるのが、この設計のいちばんの狙いです。山を真ん中に置いたのは研究所の設計上の選択で、黄金比の位置(約62%)にはしていません。

自分の曲で組むなら

  • まず自分の道を区間に分けます。住宅街・市街地・合流の多い区間を「高負荷」、信号の少ない幹線道路や高速を「低負荷」とします。
  • 高負荷の区間:85〜110 BPMの、よく知っている曲を置きます。
  • 低負荷の区間:105〜120 BPMを中心に、山を1つ作ります。新しく見つけた曲を試すならここです。
  • 合計は道のりの所要時間の±5%に収めます。渋滞で延びたときは、着地の曲を繰り返すと最後まで落ち着いたテンポを保てます。
  • BPMは半分や倍で表示されることがあります(例:87と174)。体感で拍を数えて確かめてください。
  • プレイリストは出発前にセットします。停止中を除き、運転中にスマートフォンやカーナビの画面を注視することは道路交通法で禁じられています。
  • 音量は、サイレンやクラクションがはっきり聞こえる大きさにします。
眠気や疲れを感じたら、音楽で乗り切ろうとせず、安全な場所で休憩してください。体調に合わせて、音楽を止めて運転に集中する判断も大切です。

黄金比研究所の見立て

このシーンの比率は黄金比ではなく、道の負荷から決めた2 : 7 : 3です。通勤ドライブのプレイリストは、気分を上げるためだけのものではありません。混んだ道では控えめに、単調な道では眠気を遠ざける。曲順で、運転の負荷を後ろから支えるものです。研究はまだ一致していません。だからこそ、テンポの上限と「知っている曲」という2つの安全側の決まりを置きました。山を作るのは、道が単調になる真ん中だけです。

出典・参考資料

  1. The effects of music tempo on simulated driving performance and vehicular control (Transportation Research Part F 2001;4(4):219-241)Brodsky W. / TRID (Transportation Research Board)
  2. Interactive effects of task load and music tempo on psychological, psychophysiological, and behavioural outcomes during simulated driving (Ergonomics 2022;65(7):915-932)Karageorghis CI, et al. / Brunel University London Research Archive
  3. Driving with music: Effects on arousal and performance (Transportation Research Part F 2013;21:52-65)Ünal AB, de Waard D, Epstude K, Steg L / University of Groningen
  4. The impact of music on vehicular performance: A meta-analysis (Transportation Research Part F 2019;60:743-760)Millet B, Ahn S, Chattah J / University of Miami
  5. やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用警察庁
  6. Key & BPM: Automatic — 宇多田ヒカルSongBPM
  7. Key & BPM: SUN — 星野源SongBPM
  8. Key & BPM: Just the Way You Are — ブルーノ・マーズSongBPM
  9. Key & BPM: Uptown Funk (feat. Bruno Mars) — マーク・ロンソンSongBPM
  10. Key & BPM: きらり — 藤井 風SongBPM
  11. Key & BPM: Dreams — フリートウッド・マックSongBPM
  12. Key & BPM: Golden — HUNTR/X, EJAE, オードリー・ヌナ, REI AMI & KPop Demon Hunters CastSongBPM
  13. Key & BPM: Get Lucky — ダフト・パンク, Pharrell Williams & ナイル・ロジャースSongBPM
  14. Key & BPM: マリーゴールド — あいみょんSongBPM
  15. Key & BPM: BIRDS OF A FEATHER — ビリー・アイリッシュSongBPM
  16. Key & BPM: Africa — TotoGetSongBPM
  17. Key & BPM: Pretender — Official髭男dismSongBPM
  18. Key & BPM: Lemon — 米津玄師SongBPM