チップ部品は、なぜ長さが幅の2倍なのか ― 0.25×0.125mmにも残る2:1
村田製作所が0.25×0.125mmのサーミスタを発表しました。実装面積は従来品より約60%小さい。けれど長さと幅の比は2:1のままです。長さが幅より長い理由は規格の下限から、「ちょうど2倍」の理由はインチの寸法コードから解きます。
この記事の要点
- チップ部品の主要な標準寸法11サイズのうち、8つが長さ:幅=ちょうど2:1です。
- 長さだけが「電極・絶縁・電極」の3区間を並べる方向で、幅は1区間で足ります。この非対称が長さを幅より長くします。
- 「ちょうど2倍」を決めたのは物理ではなく、インチ刻みの寸法コードと量産の慣習です。2:1から外れるサイズも3つあります。
「2 : 1」という寸法
2026年10月19日、村田製作所が0.25mm×0.125mmのNTCサーミスタを発表しました。温度で抵抗値が変わる素子で、基板の温度を測ります。NCU01シリーズで、同社は世界最小としています。量産は2027年の予定です。
これまでの同社最小品は0.4mm×0.2mmでした。面積を比べます。
0.40 × 0.20 = 0.08000 mm²
0.03125 ÷ 0.08000 = 0.3906新しい部品の実装面積は従来品の約39%。約61%の削減で、発表の「約60%削減」と合います。
見たいのは面積ではなく形です。0.25 ÷ 0.125 = 2.000。世界最小とされるサイズでも、長さは幅のちょうど2倍でした。
偶然ではありません。小型の汎用チップ部品で使われる標準寸法を並べると、同じ比が繰り返し現れます。
| ミリ呼称 | インチ呼称 | 長さ × 幅(mm) | 長さ ÷ 幅 |
|---|---|---|---|
| 0201 | 008004 | 0.25 × | 2.000 |
| 0402 | 01005 | 0.40 × | 2.000 |
| 0603 | 0201 | 0.60 × | 2.000 |
| 1005 | 0402 | 1.00 × | 2.000 |
| 1608 | 0603 | 1.60 × | 2.000 |
| 2012 | 0805 | 2.00 × | 1.600 |
| 3216 | 1206 | 3.20 × | 2.000 |
| 3225 | 1210 | 3.20 × | 1.280 |
| 4532 | 1812 | 4.50 × | 1.406 |
| 5025 | 2010 | 5.00 × | 2.000 |
| 6432 | 2512 | 6.40 × | 2.000 |
ここに挙げた11サイズのうち8つが、ぴったり2.000です。呼び方が二通りあるのは、ミリで書く系列とインチで書く系列が併存しているためです。同じ「0402」が、ミリ呼称では0.4×0.2mm、インチ呼称では1.0×0.5mmを指します。
なぜ長さが幅より長いのか
チップ部品は、両端に電極を持つ直方体です。基板の上では、2つの電極がそれぞれ別の配線につながります。つまり長さの方向には、電極・絶縁・電極という3つの区間を順に並べなければなりません。
この3区間には、規格上の下限があります。TDKの積層セラミックコンデンサ(Cシリーズ、一般品)の寸法表で、ミリ呼称1005(1.00×0.50mm)を見ると、端子幅は片側0.10mm以上、端子間隔(中央の電極がない部分)は0.30mm以上。足すと0.50mmで、長さ1.00mmの半分がこの下限で埋まります。
小さいサイズでは割合がもっと厳しくなります。ミリ呼称0402(0.40×0.20mm)は端子幅0.07mm以上、端子間隔0.14mm以上。合計0.28mmで、長さの70%を占めます。
幅の方向は事情が違います。幅に求められるのは、はんだが付く面の広さと、曲げに耐える断面だけで、区間を並べる必要がありません。1区間で足りる方向と、3区間を並べる方向。この非対称があるかぎり、寸法は長さが幅より長い側に寄ります。
「ちょうど2倍」はどこから来たか
長さが幅より長い理由は、これで説明がつきます。しかし「ちょうど2倍」の理由は別にあります。
インチ呼称は、長さと幅を0.01インチ単位で並べた数字です。「0402」なら0.04インチ×0.02インチ。4対2、つまり2:1が、呼び名そのものに書き込まれています。「0603」は6対3、「1206」は12対6、「2010」は20対10。いずれも2:1です。0.01インチを下回る最小の数サイズだけは、01005や008004のように0.001インチの桁まで使いますが、010対005も008対004も2:1です。
つまり2:1は、インチ刻みの格子の上で「次の大きさ」を選び続けた結果として定着した比です。最適値を計算して2が出たわけではありません。根拠の種類は「規格・慣習で決まった」になります。
実装側の都合も、この平たく長い形を後押ししたとされます。リフローはんだ付けでは、溶けたはんだの表面張力が部品の両端を引きます。両端の濡れ方がそろわないと、引く力の差で部品が片側に立ち上がる「ツームストーン(マンハッタン現象)」が起きやすくなります。出典はこのほかに、溶剤の蒸気による押し上げや、溶けたはんだの上での浮きも原因に挙げています。厚みのある部品ほど、また部品が小さいほど起きやすいとされます。平たく長い形は、この不良を抑える方向に働くと考えられます。
2:1から外れる3つのサイズ
例外は3つです。ミリ呼称2012(2.00×1.25mm)が1.600、3225(3.20×2.50mm)が1.280、4532(4.50×3.20mm)が1.406。いずれも極小サイズではありません。
求められる容量や電力が上がると、効いてくるのは面積そのものだと考えられます。実際、3225は3216(3.20×1.60mm)と長さが同じで、幅だけが2.50mmに広がった寸法です。容量のために幅を足した形が残っています。
縮小の歩幅にも規則が見えます。長さは1.00mm → 0.60mm → 0.40mm → 0.25mm。1段あたり1.67倍、1.50倍、1.60倍。平均すると約1.59倍です。面積では64%、56%、61%の削減になります。今回の「約60%削減」は特別な飛躍ではなく、この階段の1段分でした。
俗説・誤解チェック
1.600は黄金比1.618に近い数字です。ただしこの値は0.08インチ×0.05インチ、つまり8対5という格子の目から出ています。8と5はフィボナッチ数列に並ぶ数なので、比をとれば黄金比に近づきます。ここで起きているのは、インチを5と8で刻んだ結果に過ぎません。4532の1.406が√2(1.414)に近いのも狙った値ではなく、インチ呼称1812(0.18×0.12インチ、比は3対2)をミリに丸めて4.5と3.2になった副産物です。
インチ呼称0402は0.04インチ=1.016mmで、実寸1.0mmとほぼ一致します。しかしずれは小型側ほど大きくなります。インチ呼称0201は0.02インチ=0.508mmで実寸0.6mmと約15%、01005は0.010インチ=0.254mmで実寸0.4mmと約36%ずれます。ミリ呼称も同じで、0201は0.2×0.1mmのはずが実寸は0.25×0.125mmです。どちらも換算値ではなく、系列上の呼び名です。
黄金比研究所の見立て
2:1は、数学が導いた比ではありません。インチ刻みの寸法コードという決めごとが先にあり、そこに「3区間を並べる方向と1区間で足りる方向」という構造上の非対称が重なって、長く生き延びた比です。
注目したいのは、0.25mmまで小さくなっても比が動かなかった点です。一段上の0.40mmで、すでに長さの7割が規格の下限で埋まっています。それでも2:1は維持されました。崩す利点が小さいからだと見ています。比を変えれば、実装機の設定からパッド形状、検査の判定値まで作り直すことになりそうです。部品1個の最適化で得られる面積より、全体をそろえる価値のほうが大きいのではないでしょうか。
比率には、最適だから残るものと、そろえると得だから残るものがあります。2:1は後者です。そして後者のほうが長生きします。
出典・参考資料
- Murata Develops World's Smallest 008004-inch Size (0.25mm x 0.125mm) NTC Thermistor for Space-Constrained Temperature Sensing村田製作所(Business Wire)
- 積層セラミックチップコンデンサ Cシリーズ 一般(Up to 50V) 寸法表TDK(秋月電子通商による掲載)
- チップ部品サイズ早見表と特徴解説 ~ ミリ・インチ表記の違いと選び方パナソニック インダストリー
- How Reduce Tombstoning of Small Chip ComponentsCircuitnet
- 村田製作所、0.25mm×0.125mmの超小型温度センサを開発 実装面積を従来品比で60%削減マイナビニュース TECH+