うるう年は、なぜ400年に97回なのか ― 16世紀の改暦が拠った365.2425日
4年に1度のうるう年を、100年ごとに抜き、400年ごとに戻す。この回りくどい決まりは、1年の平均を365.2425日にするためのものです。数学的にはもっと正確な比もあるのに、なぜこの比なのか。計算で確かめます。
この記事の要点
- 4年に1度・100年で抜き・400年で戻すという決まりは、1年の平均を365.2425日にするためのものです。
- この値は、改暦が参照した年の長さ、365日5時間49分16秒=365.242546日とほぼ一致します。
- 現代の平均太陽年を基準にすると最良ではなく、31対128という、より正確な決め方も後に提案されました。
比率の正体 ― 400年に97回
グレゴリオ暦のうるう年は、三つの文で決まります。西暦が4で割り切れる年はうるう年。ただし100で割り切れる年は平年。ただし400で割り切れる年はうるう年。国立天文台暦計算室も、この三段の規則として説明しています。
数えてみます。400年のあいだに、4で割り切れる年は100回あります。そのうち100の倍数は4回(たとえば2100年、2200年、2300年、2400年)。この4回から、400で割り切れる2400年だけを残し、3回を平年に落とします。100−3=97回。これが400年に97回の中身です。
この146,097日は、7でちょうど割り切れます。20,871週です。そのため400年たつと、同じ月日が同じ曜日に戻ります。2026年10月13日は火曜日ですが、2426年10月13日も火曜日です。
なぜ400年という区切りなのか
うるう年の規則を「世紀の変わり目で間引く」という形に縛ると、選べる値はとびとびになります。400年のうち世紀年を何回平年にするか、という選択肢を並べてみます。
| 400年のうち世紀年を平年にする回数 | うるう年の回数 | 1年の平均(日) |
|---|---|---|
| 0回(ユリウス暦) | 100 | 365.2500 |
| 1回 | 99 | 365.2475 |
| 2回 | 98 | 365.2450 |
| 3回(グレゴリオ暦) | 97 | 365.2425 |
| 4回 | 96 | 365.2400 |
刻み幅は0.0025日、つまり3分36秒です。この粗さでは、狙った値にぴたりと合わせることはできません。周期を500年、900年、1000年と変えても事情は同じで、世紀単位という縛りがあるかぎり、選べるのは限られた目盛りの上だけです。
では、当時は何を狙ったのでしょうか。
どの「1年」に合わせたのか
改暦の下敷きになったのは、13世紀のアルフォンソ天文表の値でした。国立天文台暦計算室によれば、この表は1年を365日5時間49分16秒としています。日に直すと365.242546日です。
ここで、周期1000年までの世紀単位の規則をすべて計算し、この値にいちばん近いものを探すと、残るのは400年に97回でした(800年に194回のように、同じ比を別の周期で書いたものを除けば、これが最小の周期です)。差はわずか0.0000463日、1年あたり4秒です。
つまり400年97回は、気まぐれな数ではありません。100年単位で覚えられる規則という縛りのなかで、改暦が参照した年の長さに最も近づく配分でした。覚えやすさと精度の、折り合いの付け方です。
1582年2月24日の教皇勅書「インテル・グラウィッシマス」は、この規則を1600年をうるう年とし、1700年・1800年・1900年を平年とする形で定め、「400年ごとに同じ順序を守る」と書いています。
現代の物差しで測り直す
いまの天文学は、年の長さをいくつかの別々の量として区別します。メーウスとサヴォワが1992年にまとめた値では、2000年ごろの平均太陽年は365.242189日。これに対し、春分から次の春分までの間隔は365.242374日で、少し長くなります。
この二つを物差しにして、365.2425日のずれを計算し直すと、次のようになります。
| 基準にする1年 | 長さ(日) | 1日ずれるまで |
|---|---|---|
| 平均太陽年 | 365.242189 | 約3,200年 |
| 春分から春分まで | 365.242374 | 約7,900年 |
| アルフォンソ天文表 | 365.242546 | 約21,600年 |
よく見かける「約3,200年に1日」は、平均太陽年を基準にした数字です。けれども改暦の目的は、春分の日付を元の位置に戻し、そこから動かさないことにありました。春分を基準にすれば、同じ暦の精度は約7,900年に1日になります。国立天文台も、春分の時刻でずれを測るとさらに数千年かかると説明しています。測る物差しを変えると、同じ暦の評価が倍以上変わるわけです。
俗説・誤解チェック
これは正しくありません。平均太陽年の端数0.242189を分数で近似していくと、分母128のところで31対128という値が現れます。365+31/128=365.2421875日。平均太陽年との差は1年あたり0.13秒しかなく、97対400よりはるかに正確です。
この比は実際に提案されています。天文学者のメードラーが1858年に発表した暦案が、128年に1度だけうるう年を平年にする、という形のものでした。ただし採用はされていません。
もっとも、春分から春分までを基準に測ると話は変わります。31対128は約5,400年で1日ずれ、97対400の約7,900年より早くずれます。「どちらが正確か」は、何を基準にするかで入れ替わります。
黄金比研究所の見立て
400年に97回という比は、数学が導いた答えではなく、人が決めた値です。根拠の種類で言えば「規格・慣習」にあたります。別の決め方もありえましたし、より正確な案も後から出ました。
それでもこの比には、設計の筋が通っています。世紀の変わり目という、誰でも気づける節目だけを使う。規則は三行に収める。そのうえで、改暦が拠った数値にいちばん近い配分を選ぶ。制約を先に決め、その中で最適を取る、という順序です。
結果として、春分を基準にすれば8,000年近く持つ計算になります(いまの年の長さが変わらないと仮定した場合)。狙いどおりだったのか、幸運だったのかは分かりません。参照された値が現代の平均太陽年より長かったことと、春分年が平均太陽年より長いことが、たまたま同じ向きに働いた面はあります。配分の良し悪しは、何を基準に測るかを決めて初めて言える ― この暦は、そのことをよく示しています。
出典・参考資料
- 暦Wiki/グレゴリオ暦国立天文台 暦計算室
- 閏年と旧暦について(置閏法の概説)国立天文台 暦計算室
- The history of the tropical year (J. Meeus & D. Savoie, JBAA 102, 40-42, 1992)Journal of the British Astronomical Association / NASA ADS
- Translation:Inter gravissimas(1582年2月24日の教皇勅書・英訳)Wikisource
- On the calendar reform by Johann Heinrich Mädler (T. Viik)Tartu Observatory