黄金比研究所Golden Ratio Lab
97:400 グレゴリオ暦の置閏比
もうひとつの最適比

うるう年は、なぜ400年に97回なのか ― 16世紀の改暦が拠った365.2425日

4年に1度のうるう年を、100年ごとに抜き、400年ごとに戻す。この回りくどい決まりは、1年の平均を365.2425日にするためのものです。数学的にはもっと正確な比もあるのに、なぜこの比なのか。計算で確かめます。

2026年10月16日更新 2026年10月19日文・黄金比研究所編集部

暦が決めた1年と、天文学の1年単位は日。下段は上段の細い枠の中を拡大したもの365.2420365.2440365.2460365.2480365.2500ユリウス暦 1/4365.2500グレゴリオ暦 97/400365.2425ユリウス暦は128年に1日ずれた365.24210365.24220365.24230365.24240365.24250365.24260平均太陽年365.242189(メードラー案とほぼ重なる)グレゴリオ暦 97/400365.2425春分から春分までの1年365.242374アルフォンソ天文表365.242546(改暦が参照した値)1日ずれるまで ― 平均太陽年なら約3,200年、春分年なら約7,900年、アルフォンソ表なら約21,600年。図:黄金比研究所
暦が定めた1年と、天文学が測った1年。365.2425日は、現代の平均太陽年よりアルフォンソ天文表の値に近い。

この記事の要点

  • 4年に1度・100年で抜き・400年で戻すという決まりは、1年の平均を365.2425日にするためのものです。
  • この値は、改暦が参照した年の長さ、365日5時間49分16秒=365.242546日とほぼ一致します。
  • 現代の平均太陽年を基準にすると最良ではなく、31対128という、より正確な決め方も後に提案されました。

比率の正体 ― 400年に97回

グレゴリオ暦のうるう年は、三つの文で決まります。西暦が4で割り切れる年はうるう年。ただし100で割り切れる年は平年。ただし400で割り切れる年はうるう年。国立天文台暦計算室も、この三段の規則として説明しています。

数えてみます。400年のあいだに、4で割り切れる年は100回あります。そのうち100の倍数は4回(たとえば2100年、2200年、2300年、2400年)。この4回から、400で割り切れる2400年だけを残し、3回を平年に落とします。100−3=97回。これが400年に97回の中身です。

365 × 400 + 97 = 146,097 日400年分の総日数。400で割ると、1年の平均は365.2425日になります

この146,097日は、7でちょうど割り切れます。20,871週です。そのため400年たつと、同じ月日が同じ曜日に戻ります。2026年10月13日は火曜日ですが、2426年10月13日も火曜日です。

なぜ400年という区切りなのか

うるう年の規則を「世紀の変わり目で間引く」という形に縛ると、選べる値はとびとびになります。400年のうち世紀年を何回平年にするか、という選択肢を並べてみます。

400年のうち世紀年を平年にする回数うるう年の回数1年の平均(日)
0回(ユリウス暦)100365.2500
1回99365.2475
2回98365.2450
3回(グレゴリオ暦)97365.2425
4回96365.2400

刻み幅は0.0025日、つまり3分36秒です。この粗さでは、狙った値にぴたりと合わせることはできません。周期を500年、900年、1000年と変えても事情は同じで、世紀単位という縛りがあるかぎり、選べるのは限られた目盛りの上だけです。

では、当時は何を狙ったのでしょうか。

どの「1年」に合わせたのか

改暦の下敷きになったのは、13世紀のアルフォンソ天文表の値でした。国立天文台暦計算室によれば、この表は1年を365日5時間49分16秒としています。日に直すと365.242546日です。

ここで、周期1000年までの世紀単位の規則をすべて計算し、この値にいちばん近いものを探すと、残るのは400年に97回でした(800年に194回のように、同じ比を別の周期で書いたものを除けば、これが最小の周期です)。差はわずか0.0000463日、1年あたり4秒です。

365.242546 − 365.2425 = 0.0000463 日1日ぶんのずれがたまるまで、およそ21,600年かかる計算になります

つまり400年97回は、気まぐれな数ではありません。100年単位で覚えられる規則という縛りのなかで、改暦が参照した年の長さに最も近づく配分でした。覚えやすさと精度の、折り合いの付け方です。

1582年2月24日の教皇勅書「インテル・グラウィッシマス」は、この規則を1600年をうるう年とし、1700年・1800年・1900年を平年とする形で定め、「400年ごとに同じ順序を守る」と書いています。

現代の物差しで測り直す

いまの天文学は、年の長さをいくつかの別々の量として区別します。メーウスとサヴォワが1992年にまとめた値では、2000年ごろの平均太陽年は365.242189日。これに対し、春分から次の春分までの間隔は365.242374日で、少し長くなります。

この二つを物差しにして、365.2425日のずれを計算し直すと、次のようになります。

基準にする1年長さ(日)1日ずれるまで
平均太陽年365.242189約3,200年
春分から春分まで365.242374約7,900年
アルフォンソ天文表365.242546約21,600年

よく見かける「約3,200年に1日」は、平均太陽年を基準にした数字です。けれども改暦の目的は、春分の日付を元の位置に戻し、そこから動かさないことにありました。春分を基準にすれば、同じ暦の精度は約7,900年に1日になります。国立天文台も、春分の時刻でずれを測るとさらに数千年かかると説明しています。測る物差しを変えると、同じ暦の評価が倍以上変わるわけです。

俗説・誤解チェック

「400年に97回は、数学的に最良の近づけ方である」

これは正しくありません。平均太陽年の端数0.242189を分数で近似していくと、分母128のところで31対128という値が現れます。365+31/128=365.2421875日。平均太陽年との差は1年あたり0.13秒しかなく、97対400よりはるかに正確です。

この比は実際に提案されています。天文学者のメードラーが1858年に発表した暦案が、128年に1度だけうるう年を平年にする、という形のものでした。ただし採用はされていません。

もっとも、春分から春分までを基準に測ると話は変わります。31対128は約5,400年で1日ずれ、97対400の約7,900年より早くずれます。「どちらが正確か」は、何を基準にするかで入れ替わります。

ユリウス暦の1年365.25日は、平均太陽年より0.0078日、春分から春分までの1年より0.0076日長い値です。ニカイア公会議の325年から1582年までの1257年で、春分の日付はおよそ9.6日ぶん前倒しになりました(春分年を基準にした計算。平均太陽年を基準にすると約9.8日)。改暦で10日を飛ばしたのは、この分を戻すためです。

黄金比研究所の見立て

400年に97回という比は、数学が導いた答えではなく、人が決めた値です。根拠の種類で言えば「規格・慣習」にあたります。別の決め方もありえましたし、より正確な案も後から出ました。

それでもこの比には、設計の筋が通っています。世紀の変わり目という、誰でも気づける節目だけを使う。規則は三行に収める。そのうえで、改暦が拠った数値にいちばん近い配分を選ぶ。制約を先に決め、その中で最適を取る、という順序です。

結果として、春分を基準にすれば8,000年近く持つ計算になります(いまの年の長さが変わらないと仮定した場合)。狙いどおりだったのか、幸運だったのかは分かりません。参照された値が現代の平均太陽年より長かったことと、春分年が平均太陽年より長いことが、たまたま同じ向きに働いた面はあります。配分の良し悪しは、何を基準に測るかを決めて初めて言える ― この暦は、そのことをよく示しています。

出典・参考資料

  1. 暦Wiki/グレゴリオ暦国立天文台 暦計算室
  2. 閏年と旧暦について(置閏法の概説)国立天文台 暦計算室
  3. The history of the tropical year (J. Meeus & D. Savoie, JBAA 102, 40-42, 1992)Journal of the British Astronomical Association / NASA ADS
  4. Translation:Inter gravissimas(1582年2月24日の教皇勅書・英訳)Wikisource
  5. On the calendar reform by Johann Heinrich Mädler (T. Viik)Tartu Observatory